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NOTICE PC PS4 2020/06/15 21:00

蛇のクレードル:Part.2(タキオン)


明るく照らされたレース場にタキオンの目は奪われた。ラジコン車両の複製が勢いよく走りだし、障害物をかわすのを眺め、
このドーンチルドレン自身のインストラクターの言葉を頭から振り払おうとした。しかし、無駄だった。

「休息を取ることを躊躇うな。天才ですら必ず休息は必要だ。たった数秒の休息でさえ、今まで考えもしなかった発見に人を導くことがある。」

タキオンは笑みを浮かべながら透明のパーティションから離れ、今では実験体を美しく爆発させるための
ドーンチルドレンの遊び場となった古い試験場を後にした。もう随分前から理性を失ってしまった師は、
自身の一番弟子が完璧な車両という夢の中を彷徨っていることを知ったら何と言うだろうか?

車両は必要に応じて制御し適応させることができるが、何らかの負荷により損傷した人間の身体を改良することはできない。
少なくとも今の時代では。
自分の世界に入り込んでいたタキオンは、科学者たちが彼に向かって手を振っていることに気が付かなかった。
明らかに酒場へ向かおうとしている彼らは、ドーンチルドレンも一緒にと誘った。タキオンは少しの間どうするか迷った。
彼らについて行くべきか、設計図で溢れる自室へ戻り負荷を軽減させた体液区分の1000回目の改良を行うべきか。

— もうどうにでもなれ、とタキオンは呟いた。

今ここで溜め込んでいるものを発散させないと、彼自身がおかしくなってしまう。
たった1週間の強制的な休暇、身体に負った傷、そしてレイダーたち。
これらが、彼をドーンチルドレンの優秀な使者から偏執狂に変えてしまうなんて一体誰が予測できただろうか?

酒場の方を指さす仲間の姿を見たタキオンは、芝居がかったように笑顔で頷いた。結局は彼も人間なのだ。

— …全然飲んでいないじゃないか。怪我のせいか?
仲間が同情するように尋ね、その夜唯一注文したオレンジ色の液体を前にタキオンは頷いた。
特性の刺激性のカフェイン剤だ(以前はアルコールが出されていたが、ドーンチルドレンの間ではあまり好まれなかった)。

— ある意味な。 使者は飾らない笑顔で答えた。子どもの頃に説明しがたい魅力的な笑顔を持つことに気付いたタキオンは、
シェルターで臆面もなくその笑顔を使用していた。 — どうすればこんな場所に長居することができるんだ?

テーブルの向こう側にいる生物学者の女がいつもより恥ずかしそうに笑い、タキオンは正気を取り戻した。確かではないが…

— 君の推理は正しい。 聞きなれた声が頭上のどこからか聞こえた。

タキオンの視界に内部セキュリティの専門家が現れた。

— 行くぞ、仕事だ。ステッペンウルフの使者が我々の地へやってきた。
彼と一緒にファイアスターターの元へ行ってもらうことになりそうだ。

すると少しの間、彼の視界が歪んだ。彼は「ノヴァ」のコックピットにいる気分になり、ザラザラしたハンドルを指で感じた。

— これ以上待つことはできない。 待ちわびていた仕事を受け取った使者は仲間に微笑みかけテーブルから去った。

タキオンは背中の傷の痛みが消えたことにすら気付かなかった。

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